私のある気持ちのはなし。

私の目ってまだまだ機械に劣らない。

 

視力のさして良くない私でも、

澄んだ夜空に星が瞬くのを見つけられるのに、写真にはおさまらない。

でも残すことは出来ない。

 

今日は会社で本当に嫌な瞬間があって

絶対辞めたる!

と思いながら仕事をした。

そんな自分がすごく悲しかった。

辞めると思いながらその仕事をする時間の悲しさってすごい。

 

今日はもうひとつ、

高校生の頃に書いた小説を載せようと思う。

昨日掘り返した本当に短いもの。

きっとこれまでもこれからも続く、

無くなることの無い、

ある気持ちの話。

高性能な私の目と、

私の時間と、

ずっとずっと消えないもの

全てに連なる気持ちの話。

 

 

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冬の白い花

 

 

ふと、窓の外を見た。

震える木の枝の、その先に小さな花が降り積もっていた。

誰かが気が付いたその光景に、簡単に教室中が伝染していって、誰もがいつの間にかそこを見つめていた。そんな中、私だけはほんの少し視線をずらして、いつもと同じ横顔を盗み見た。そして、いつもと同じ様に、組んだ腕に頭を沈めた。

授業が再開した教室の中に、窓の外の小さな音が聞こえる。私の脳に、あの横顔と、小さなその音だけが大きく大きく響いた。

 

「藤村」

そう声をかけてきたのは担任の先生。私をよく知る担任の先生。

「大丈夫か?」

そう言う声に頷き返す。頷きながらも私の頭の中にはどんどんとあの花が積もっていく。大丈夫、その言葉にどれだけの意味が込められているんだろう。その優しさに触れた私は「大丈夫」になる。そして、静かに去っていく足音に、脳は再び支配権を失っていく。白、白、どこまでも白。

私の心の内は、いつからだっただろう、常に白に支配されている。頭の中がそうでなくても心はいつも白かった。何も無い、そう見えて、ここには見えない程のものが溢れている。溢れて溢れて私は「大丈夫」じゃなくなってしまう。そんな時、いつもあの横顔を見つめる。教室の誰とも違う、その心がその姿に映っている様で、それがまるであの白い花の様で。

 

顔をあげて教室を見渡す。微かに白さを湛えたこの部屋に私は精一杯孤立する。その白さに溶けきらないように、孤立する。

それでも、彼等と同じ白い花を見つめる私は、きっと「大丈夫」。